2008年04月16日 23:00
中南米諸国内でも格差拡大
ブラジル各メディアは十四日、同国南東部沖で巨大な海底油田が発見されたと報じた。同国は、鉄鉱石や原油などのエネルギー資源だけでなく、大豆などの食料生産の分野でも世界有数の資源大国となりつつある。一方、同じくラテンアメリカの一角に位置するハイチでは、食料価格急騰から暴動・略奪などが続いている。世界の中で「持てる国」と「持たざる国」の差が現れてきた。
最貧国ハイチでは暴動続く
カリブ海の島国ハイチと南米の大国ブラジル。両国共に中南米(ラテンアメリカ)の一角に属しながらその国力や国土はゾウとアリほどにも違うが、近年になって際立ってきたのが、資源・食料を「持てる者」と「持たざる者」の差だ。
ハイチの首都ポルトープランスは、もともと農業に適した土地が少なく、食料自給率は50%にも満たない。加えて、これといった資源もないために、世界的な資源・食料価格の変動を受けやすい。
ラテンアメリカ最貧国の一つとして、同国では国民の多くが貧困層に属している中で、昨年来の急激な食料価格、特に主食のコメの高騰は市民の懐を直撃、商店襲撃などの暴動につながった。
食料価格の高騰による暴動や社会不安が起きているのはハイチ以外にも見られるが、特に政府や民間に資金力がない貧困・途上国にそれが顕著だ。食料価格を抑え込むだけの資金・実行力が政府にないことも一部貧困国の社会不安を増大させていよう。ハイチでは、国際支援金を利用してコメの価格を引き下げた。
首相解任にまでつながった暴動がハイチで続く中で、ラテンアメリカの経済大国ブラジルでは、未曽有の原油ラッシュと農業景気に沸いている。
ブラジル石油監督庁のリマ長官は十四日、同国南東部沖の大西洋海底で推定最大三百三十億バレルの巨大油田が見つかったと明らかにした。埋蔵量が公式に確認されれば、二十一世紀に発見された油田の中では世界最大、埋蔵量では世界で三位の油田になる。
ブラジルは既に一昨年から原油の完全自給を達成した国の一つとなったが、近年になって海底油田の発見と開発が続いており、今回の発見でその埋蔵量が一気に現在の三倍にもなるという。ルラ・ブラジル大統領は昨年来、石油輸出国機構(OPEC)加盟の可能性にも言及しているほどだ。
石油業界だけでなく、世界の金融界さえもが「原油生産のピーク論が崩れる可能性すらある」として注目するほどの大油田の発見に沸くブラジルだが、同国はそれだけではない。
ブラジルは、エタノール燃料ブームに乗った「エタノール景気」や、中国やインドの成長による世界的な大豆消費の拡大などを通じて「二十一世紀の食料大国」として世界の表舞台に一気に出てきた。昨年、ブラジルの生産農家は記録的な利益を上げたという。
ブラジルは、既に世界有数の食糧生産・輸出大国の位置を獲得しているが、同じ農業大国の米国と明らかに違うのは、その生産可能性だ。
米国の農業生産は頭打ちにあるといわれるが、ルラ大統領は「ブラジルが生産可能な耕地は現在の三倍はある」と最近の国連会議で発言した。事実、生産性の向上余地を含めると、ブラジルでの食料生産はまだまだ伸びるとみられている。
「二十一世紀の食料問題はブラジルがカギを握る」といわれるゆえんだ。
農業大国のブラジルは、ハイチに比べてみれば、食料事情ではるかに恵まれていると言えそうだが、世界的な食料高騰と資源獲得競争の波は自由市場経済の下で確実にブラジルにも押し寄せている。
同国内では、昨年来から小麦粉や大豆などの値段が急騰、各種食用油が50%以上の値上がりをするだけでなく、日々の食卓に欠かせないパンや基本食料品の値上げが、市民だけでなくインフレ対策に悩む同国政府の頭痛の種となっている。ブラジルは食料輸出大国だが、国内価格も世界的な相場に左右されるわけだ。
ブラジルで、近年特に穀倉地帯として注目されているブラジル中西部のマットグロッソ州と南マットグロッソ州。
南マットグロッソ州では、エタノール燃料ブームに伴う海外からの投資が押し寄せたことで、サトウキビ農場が一気に増えた。また、大豆などを確保したい中国は、現地の大規模農家や地主と契約、同州で生産される数十%にも及ぶ大豆など、多くの農産物を押さえている。
これまで牛を放牧していた地主がエタノールの原料となるサトウキビや大豆生産などに切り替えたことで、牛肉の生産が減った。これまで「牛の州」といわれて海外へ牛肉を大量に輸出してきた南マットグロッソ州においても牛肉の値段はうなぎ上りとなり、昨年だけで50%近くの値上げがあった。ブラジルの一般庶民は、農業大国であるにもかかわらず食品価格の高騰に悲鳴を上げている。
世界的な食料争奪戦は、世界の食料庫となりつつあるブラジルにも少なからぬ影響を及ぼしている。
原油や鉄鉱石などの豊富な資源と農業大国としての大きな可能性を持つブラジルは、世界の食料問題と資源獲得競争の中でこれから大きな役割を占めることとなる。
また、同国内での食料高騰が今後、ブラジルの内政の方向にも影響を与えないとは言い切れない。
ブラジルはこの後、国内環境を迅速に整備する力と、より成熟した内政・外交力を求められることになる。
(2008/04/16 世界日報)
ブラジル各メディアは十四日、同国南東部沖で巨大な海底油田が発見されたと報じた。同国は、鉄鉱石や原油などのエネルギー資源だけでなく、大豆などの食料生産の分野でも世界有数の資源大国となりつつある。一方、同じくラテンアメリカの一角に位置するハイチでは、食料価格急騰から暴動・略奪などが続いている。世界の中で「持てる国」と「持たざる国」の差が現れてきた。
最貧国ハイチでは暴動続く
カリブ海の島国ハイチと南米の大国ブラジル。両国共に中南米(ラテンアメリカ)の一角に属しながらその国力や国土はゾウとアリほどにも違うが、近年になって際立ってきたのが、資源・食料を「持てる者」と「持たざる者」の差だ。
ハイチの首都ポルトープランスは、もともと農業に適した土地が少なく、食料自給率は50%にも満たない。加えて、これといった資源もないために、世界的な資源・食料価格の変動を受けやすい。
ラテンアメリカ最貧国の一つとして、同国では国民の多くが貧困層に属している中で、昨年来の急激な食料価格、特に主食のコメの高騰は市民の懐を直撃、商店襲撃などの暴動につながった。
食料価格の高騰による暴動や社会不安が起きているのはハイチ以外にも見られるが、特に政府や民間に資金力がない貧困・途上国にそれが顕著だ。食料価格を抑え込むだけの資金・実行力が政府にないことも一部貧困国の社会不安を増大させていよう。ハイチでは、国際支援金を利用してコメの価格を引き下げた。
首相解任にまでつながった暴動がハイチで続く中で、ラテンアメリカの経済大国ブラジルでは、未曽有の原油ラッシュと農業景気に沸いている。
ブラジル石油監督庁のリマ長官は十四日、同国南東部沖の大西洋海底で推定最大三百三十億バレルの巨大油田が見つかったと明らかにした。埋蔵量が公式に確認されれば、二十一世紀に発見された油田の中では世界最大、埋蔵量では世界で三位の油田になる。
ブラジルは既に一昨年から原油の完全自給を達成した国の一つとなったが、近年になって海底油田の発見と開発が続いており、今回の発見でその埋蔵量が一気に現在の三倍にもなるという。ルラ・ブラジル大統領は昨年来、石油輸出国機構(OPEC)加盟の可能性にも言及しているほどだ。
石油業界だけでなく、世界の金融界さえもが「原油生産のピーク論が崩れる可能性すらある」として注目するほどの大油田の発見に沸くブラジルだが、同国はそれだけではない。
ブラジルは、エタノール燃料ブームに乗った「エタノール景気」や、中国やインドの成長による世界的な大豆消費の拡大などを通じて「二十一世紀の食料大国」として世界の表舞台に一気に出てきた。昨年、ブラジルの生産農家は記録的な利益を上げたという。
ブラジルは、既に世界有数の食糧生産・輸出大国の位置を獲得しているが、同じ農業大国の米国と明らかに違うのは、その生産可能性だ。
米国の農業生産は頭打ちにあるといわれるが、ルラ大統領は「ブラジルが生産可能な耕地は現在の三倍はある」と最近の国連会議で発言した。事実、生産性の向上余地を含めると、ブラジルでの食料生産はまだまだ伸びるとみられている。
「二十一世紀の食料問題はブラジルがカギを握る」といわれるゆえんだ。
農業大国のブラジルは、ハイチに比べてみれば、食料事情ではるかに恵まれていると言えそうだが、世界的な食料高騰と資源獲得競争の波は自由市場経済の下で確実にブラジルにも押し寄せている。
同国内では、昨年来から小麦粉や大豆などの値段が急騰、各種食用油が50%以上の値上がりをするだけでなく、日々の食卓に欠かせないパンや基本食料品の値上げが、市民だけでなくインフレ対策に悩む同国政府の頭痛の種となっている。ブラジルは食料輸出大国だが、国内価格も世界的な相場に左右されるわけだ。
ブラジルで、近年特に穀倉地帯として注目されているブラジル中西部のマットグロッソ州と南マットグロッソ州。
南マットグロッソ州では、エタノール燃料ブームに伴う海外からの投資が押し寄せたことで、サトウキビ農場が一気に増えた。また、大豆などを確保したい中国は、現地の大規模農家や地主と契約、同州で生産される数十%にも及ぶ大豆など、多くの農産物を押さえている。
これまで牛を放牧していた地主がエタノールの原料となるサトウキビや大豆生産などに切り替えたことで、牛肉の生産が減った。これまで「牛の州」といわれて海外へ牛肉を大量に輸出してきた南マットグロッソ州においても牛肉の値段はうなぎ上りとなり、昨年だけで50%近くの値上げがあった。ブラジルの一般庶民は、農業大国であるにもかかわらず食品価格の高騰に悲鳴を上げている。
世界的な食料争奪戦は、世界の食料庫となりつつあるブラジルにも少なからぬ影響を及ぼしている。
原油や鉄鉱石などの豊富な資源と農業大国としての大きな可能性を持つブラジルは、世界の食料問題と資源獲得競争の中でこれから大きな役割を占めることとなる。
また、同国内での食料高騰が今後、ブラジルの内政の方向にも影響を与えないとは言い切れない。
ブラジルはこの後、国内環境を迅速に整備する力と、より成熟した内政・外交力を求められることになる。
(2008/04/16 世界日報)



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